平谷美樹の歌詠川通信

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カテゴリ:作品紹介( 12 )

「レスレクティオ」 角川春樹事務所刊

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「エリ・エリ」の続編ですが、単独でも読めるように書いています。
舞台は、この宇宙とはまったく異なる宇宙。
しかし、「エリ・エリ」の登場人物たちが出てきます。
SFを読み慣れない方は、「異世界に転生した」ととらえて読んでいただければ。

レスレクティオとはラテン語で「復活」という意味です。
執筆中はずっと生と死を考え続けました。
16年間一緒に暮らした猫の死を
受け止めるために書いたといっても過言ではないかも……。

死とは永遠の別れではない。
必ず、大いなる回帰の後、もう一度出会うのだ。
そういうことをスピリチュアルな表現を用いずに書きました。

ぼくは宗教的には中立です。
曹洞宗の寺の檀家ではありますが(笑)
百物語シリーズも書いていますが、心霊現象に対しても、ニュートラルな意識を忘れないようにしています。
「エリ・エリ」の出版後には、当日勤めていた学校に、
『先生の疑問にお答えできる本がありますので、無料でお送りします』
という宗教関係の方からの電話がありました(笑)
何かを強く信じてしまえば、他の物を排除してしまう精神状態になります。
それを避けるために、ぼくは常にニュートラルでありたいと思っているのです。
でも……。見えるモノはしかたがないんですよねぇ(笑)

「レスレクティオ」の執筆時にはずっとスラヴァの「アヴェ・マリア」や、グレゴリオ聖歌をかけていました。
読書時のBGMにもピッタリだと思います。

「エリ・エリ」「レスレクティオ」で“神の本質”を追求し、
最終章でありプロローグでもある「黄金の門」では地上の神を追求しました。

ということで、次回は

「黄金の門」 角川春樹事務所刊

でいきます。
舞台はほんの少し未来のエルサレム。
読んだ方から「取材に行ったのかと思った」と言っていただけました。
エルサレムには行ったこともないのですが、かなりリアルに描けていると、
かの地をよく知る方にも太鼓判をいただいたので、とても嬉しかったことを覚えています。
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by y-hiraya | 2009-01-23 17:30 | 作品紹介 | Comments(0)

作品紹介・その7 『オンライン小説 平谷美樹ショートショート』連載開始

2000年9月。
平谷美樹は角川春樹事務所のホームページで週一回、ショートショートの連載を始める。
『エリ・エリ』の第一回小松左京賞受賞が発表された直後のことだった。
平谷にとってショートショートは初挑戦のジャンルで、本人の言うとおり《ショート・ストーリー》になってしまっているものも見受けられる。
しかし第34話『切り取られた風景』のように、短編小説として高い完成度を持つ作品もそこには含まれている。
連載は約一年続き、作品数は50本を数えた。
後にこのショートショートは『時間よ止まれ』というタイトルで文庫化されたが、何本かの作品は未収録である。

※未収録作品を含め50本全て、今も角川春樹事務所HPで読むことができます。

〈文・管理人M〉
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by y-hiraya | 2008-11-28 15:39 | 作品紹介 | Comments(0)

作品紹介・その11 『創世記の筺(ジェネシス・キューブ)』

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『創世記の筺(ジェネシス・キューブ)』は「SFマガジン」(早川書房・刊)01年2月号に発表された短編である。ある男がひっそりと犯した、神殺しの物語だ。

小惑星群の片隅で、森山が見つけた四角い“筺”。
その内部には生命の素が詰まっていた。
人類はその“筺”から発生したことを、森山は知ってしまう……。

『エリ・エリ』のサイドストーリーではあるが、内容的には本編とはあまり関係がない。
主人公が神殺しに及んだ理由を、もう少し書き込むべきだったろう。

〈文・管理人M〉

※前回紹介した『運河の果て』は、発表年月日の順で行くと『創世記の筺』の次となります。
 『創世記の筺』が〈その11〉、『運河の果て』が〈その12〉です。
 訂正いたします。
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by y-hiraya | 2008-08-24 15:23 | 作品紹介 | Comments(0)

作品紹介・その12 『運河の果て』

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29世紀、火星。
17歳のアニス・ソーヤーは自らの“性別”を決定するため、ナローボートで火星の運河を巡る旅に出た。
一方、外惑星連合の議員リン・ワースリーは、火星と地球・木星のあいだで勃発したある事件の調査に乗り出していた……。

『運河の果て』は01年6月、3作目の長編として角川春樹事務所から刊行された。
テラフォーミングが施され人類を受け入れた火星を舞台にした本作では、資源採掘に絡む陰謀と火星の古代文明の秘密が描かれる。

現在“火星人の造った運河”などない、というのが定説になっているが、本作ではそれが実は“あった”という設定になっている。
その設定が“ナローボートの旅”という詩情豊かな展開を生み出し、そこにブラッドベリの『火星年代記』と重なるものを感じた読者も多かったようだ。


(ナローボートとはイギリスの運河で用いられる幅の狭い船。以前は荷物の運搬に使われたが、現在では旅行や観光にも利用される。)

〈文・管理人M〉
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by y-hiraya | 2008-08-15 15:20 | 作品紹介 | Comments(0)

作品紹介・その10 『五芒の雪』

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2001年1月。
同人誌「小松左京マガジン」(発行・(株)イオ 発売・角川春樹事務所)が創刊された。
短編『五芒の雪』は、平谷美樹の小松左京賞受賞後第一作として、その創刊号に掲載された。

岩手県遠野市の宇宙港建設予定地で観測された、重力場の異常。
主人公の記憶に残る少女の幽霊と、五角形の雪の結晶。
建設予定地には巨大な「あるもの」が埋まっており、それが重力場を歪ませ、さらに……。

〈科学とオカルト〉は現在でも平谷が好んで取り上げるテーマである。
本作もそれらが違和感なく融合し、叙情的な余韻を残している。

「小松左京マガジン」は
現在30号まで発行されている。
購入方法は(株)イオのHPをご覧下さい。

〈文・管理人M〉
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by y-hiraya | 2008-08-09 14:54 | 作品紹介 | Comments(2)

作品紹介・その9 『エリ・エリ』

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2000年9月、平谷美樹は『エリ・エリ』で角川春樹事務所が主催する
《小松左京賞》の第一回受賞者となった。

『エリ・エリ』は、神を喪った世界に生きる人々の物語だ。
時間的には前作『エンデュミオン エンデュミオン』の延長線上に位置しているが、続編ではない。
“神の印”を求めて宇宙の果てまで旅をする神父。
彼が乗り込む宇宙船を造る科学者。
2000年前のイエスとユダ。
宇宙探査という名の“無駄づかい”を阻止しようと、宇宙船の破壊を目論む政治家――。
そして地球外生命体のものと思われる謎の飛行物体。
前作同様、三人称多視点で物語は進んでゆくが、リーダビリティは驚くほど高くなっている。
“本格SF”のカテゴリーに分類される作品なので専門用語が難しい印象を与えるが、構えずに読んでみて欲しい。


蛇足ながら付け加えると、主人公の日本人神父が預かる教会は、
岩手県の沿岸部・歌詠町にある、という設定になっている。

画像は初版のハードカバー版(角川春樹事務所・刊)。
文庫版も発行されている。

〈文・管理人M〉
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by y-hiraya | 2008-07-27 15:07 | 作品紹介 | Comments(0)

作品紹介・その6 『エンデュミオン エンデュミオン』

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2000年6月、角川春樹事務所(ハルキ・ノベルス)から発行された作家・平谷美樹のプロデビュー作である。
前年に募集された《第一回角川春樹小説賞》の最終選考に残り、加筆・訂正を経て出版された。

羊飼いの少年エンデュミオンに恋をした月神セレネが、彼の美と若さを保つために永遠の眠りを与えた――というギリシャ神話のエピソードが本作の発想の元になっている。
月は神の座ではなく、豊富な資源の塊であることに気付いてしまった人類。
科学の発展と共に、人類から見捨てられようとしている神々。
地球と月を舞台に、膨大な数の登場人物たちが様々な視点から語るこの物語は、今読み返すと確かに“詰め込みすぎ”の観は否めない。
しかし、この膨大な登場人物たちひとりひとりが、それぞれの個性を持ってきちんと描き分けられているので、物語自体に混乱はない。
文体は、翻訳小説の影響が強く、饒舌である。文章力はあるが、エンターティメント小説の必要条件である“読みやすさ”からはやや離れている。
デビュー作ゆえの短所は幾つも目に付く。
だが、たったひとつのアイディアから原稿用紙1000枚を越える物語を生み出すストーリー・テラーとしての能力は、今と比べても遜色はない。
「デビュー作には、その作家の全てが詰まっている」と言われるが、まさにその通りである。

※本作は現在、中古品のみ入手可能。
(角川春樹事務所には在庫があるかもしれません)

〈文・管理人M〉
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by y-hiraya | 2008-07-16 15:50 | 作品紹介 | Comments(0)

作品紹介・その5 連載「フライの雑誌」

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97年の夏から、平谷美樹はフライフィッシングの専門誌「フライの雑誌」(フライの雑誌社・刊)で短編小説を連載した。まだプロデビュー以前のことである。
この雑誌は編集部やプロのライターによる記事以外にも、一般読者からの投稿も受け付けていた。平谷は自らの趣味であるフライフィッシングを題材として、計8本の短編を発表した。
タイトルは以下の通り。

第38号 『野営場』
第39号 『月と岩魚』
第40号 『雪女』
第41号 『ライズ待ち』
第42号 『KING OF FLY』
第43号 『奴の巻いたフライ』
第44号 『恐怖の一夜』
第45号 『雛人形』

作品の傾向は、ホラー色の強い“奇妙な味”のものが多かった。
特に『恐怖の一夜』は、今も「あれを読んだせいでソロキャンプが出来なくなった」という人もいるほどの強烈なホラー作品に仕上がっている。

画像は「フライの雑誌 第38号」
〈文・管理人M〉
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by y-hiraya | 2008-07-10 19:50 | 作品紹介 | Comments(2)

作品紹介・その4 『青邨の杖(ステッキ)』

『グラフ文学散歩・種山ヶ原幻想』に続き、「北の文学 第29号」(94年11月 岩手日報社)に掲載された紀行文である。
テーマに選んだのは山口青邨。岩手県盛岡市生まれの俳人である。

岩手県北上市にある日本現代詩歌文学館に展示されていた、青邨の遺品。その中に、一本の奇妙なステッキがあった。角の生えた悪魔や、箒にまたがった魔女の刻印のあるメダルが打ち付けられたステッキ。平谷は、そのステッキに妄想をかき立てられ、調査を始める――。

結論から言えば、それは魔女伝説で有名なドイツのブロッケン山に登った記念のステッキだった。
その結論にたどり着くため、平谷は仮説を立て、資料を集め、妄想と現実の接点を探る。
それは今「胆沢ダム広報誌・ササラ」(発行終了)や「北東北情報マガジン・rakra」で連載している《歴史推理紀行》と同様の手法である。

『青邨の杖』は、まさに平谷流エッセイの“原点”と言えるだろう。

〈文・管理人M〉
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by y-hiraya | 2008-07-09 21:57 | 作品紹介 | Comments(0)

作品紹介・その3 『種山ヶ原幻想』

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「北の文学」では10年ほど前まで、優秀作受賞者は〈グラフ文学散歩〉という紀行文を書くことになっていた。
岩手県ゆかりの作家・あるいは作品に材を取った原稿用紙10枚ほどの文章に、自分で撮影した写真をそえるのだ。
『種山ヶ原幻想』は、「北の文学」第28号(94年5月 岩手日報社)に掲載された。
宮澤賢治の作品の舞台となった奥州市江刺区の種山高原を歩き、その情景を描いたもので、平谷美樹の初のエッセイである。
初挑戦ということもあり、その文章はややぎごちない。
しかし小雪の舞う初冬の高原の、幻想的な空気は充分に描き出されている。

写真・種山高原

〈文・管理人M〉
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by y-hiraya | 2008-07-02 21:43 | 作品紹介 | Comments(0)